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2020年11月29日 (日)

A.Ensslin(2012).『The Language of Gaming』を読む(Palgrave Macmillan)

主にTVゲームに関わる言語使用が分析されています。ゲーム作成者の言語、ゲームプレイヤー同士の言語、ゲーム内の登場人物の言語、ゲーム内のコマンドの言語、ゲームのパラテクスト(ソフトが入った箱やそのゲームの宣伝など)の言語が幅広くかつ多角的に分析されています。また、ゲームに関わる語形成についてもかなり詳細な事例が挙げられていました。発行されてから少し年月が経っており、VRも身近になってきた現在では少し情報的に古くなっているところもあるのですが、新しいジャンルの言語を分析する上でどのように進めていけばよいのかということの参考にもなるでしょう。

Ensslin, A. (2012). The language of gaming. New York: Palgrave Macmillan.

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C.Bubel & A.Spitz(2013).「The Way to Intercultural Learning Is Through the Stomach:Genre-Based Writing in the EFL Classroom」を読む(C.Gerhardt,M.Frobenius,& S.Ley(編),『Culinary Linguistics:The Chef's Special』,John Benjamins)

科目横断型の英語教育実践が今後進んでいくと思われますが、その1つの参考になるかもしれません。CEFRB1レベルのドイツ人英語学習者に英語のレシピの例をいくつか示し、その言語的特徴をミクロレベルとマクロレベルで検討させた後に、自分の出身地の郷土料理(学習者がなじみのあるその土地の料理)のレシピを英語で作成させる(グループで作成)という実践の報告、及び学習者が作成した英語レシピの分析、が中心となる論文です。

Bubel, C., & Spitz, A. (2013). The way to intercultural learning is through the stomach: Genre-based writing in the EFL classroom. In C. Gerhardt, M. Frobenius, & S. Ley (Eds.), Culinary linguistics: The chef's special (pp. 157-187). Amsterdam: John Benjamins.

概要

著者らは、レシピはその言語だけでなく、それを伝達すること、料理を作成するまえの準備行為、すべてが文化的実践行為であり、したがって自身の文化の料理レシピを他言語で表現することは文化的翻訳(cultural translation)であると考えています。このような前提に立っているため、レシピ翻訳は異文化間学習に非常に有益な活動になると考えられています。

次に、著者らはレシピの言語研究の流れを簡単に整理した後、英語のレシピの言語的特徴をマクロレベル(内容の展開)とミクロレベル(文法的特徴及び語彙的特徴)に分けて整理します。詳しい内容はこの記事では省略しますが、自然な英語でレシピを作らせるには特にミクロレベルで標準英語とは少し違った言い方(冠詞や前置詞の使い方、主語の省略など)が必要になることがよく分かります。英語レシピの言語的特徴として重要なポイントが列挙されているので、非常に勉強になります。

最後に、著者らは学習者が作成した英語のレシピの言語的特徴を分析しています。学習者はマクロレベルでは見本のレシピ通りに作成できていたそうです。しかしながら、ミクロレベルでは、うまく英語のレシピの言い方を再現できているケースもあれば、そうではないものも見られたとのことです。うまく再現できなかった理由としては、主に母語の干渉(ドイツ語のレシピの表現方法を転移させてしまったケース)、特定の構造の過剰一般化、英語ライティングの授業の影響、が指摘されていました。英語ライティングの授業の影響について少し補足をしておきます。実はレシピでは類似した構造ないしは表現が反復される傾向があるのですが、通常のライティングでは同じ表現を繰り返すと稚拙な文章になってしまいます。その結果として、今回の実践では、学習者は表現にバリエーションをつけようとした結果、英語レシピの表現と乖離してしまったのではないかということが指摘されていました。この点から、著者らはジャンルに応じたライティングの必要性を強く指摘しています。

この論文は、異文化理解教育とライティングに大きな示唆を与える論文だと思います。また家庭科と英語科を横断するような実践をする場合には必読の論文と言えると思います。

なお、この論文集の他の論文では、料理ショーのトークの分析などもされていて、非常に面白い論文が目白押しです。

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