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2020年5月26日 (火)

R.A.Zwaan(1996).「How Empirical Is the Empirical Study of Literature?」を読む(H.Hendrix,J.Kloek,S.Levie,& W.van Peer(編),『The Search for a New Alphabet: Literary Studies in a Changing World』,John Benjamins)

文学の経験的研究がある程度形になってきた1990年代に一部の研究者に認識されていた問題点が議論されています。主に2点挙げられていますが、今現在でもこれらは重要な課題として日々研究者によって取り組まれていると言えます。また、著者がなぜ文学読解を実証的に調査しようとしたのか、その際にどのような葛藤があったのか、といったことがかなり赤裸々に語られています。

Zwaan, R. A. (1996). How empirical is the empirical study of literature? In H. Hendrix, J. Kloek, S. Levie, & W. van Peer (Eds.), The search for a new alphabet: Literary studies in a changing world (pp. 321-326). Amsterdam: John Benjamins.

概要

著者は、文学の経験的研究が今後も存続していくためには、以下の2つの問題に取り組まなければならないとしています。

  • empirical」という語をもっと真剣に考えなければならない。
  • 文学の経験的研究をフォルマリズム、構造主義、読者反応理論の延長線上にとらえて研究しなければならない。

2点目については、フォルマリズムなどで指摘されてきた理論的な概念が実際にどのように文学読解の中で影響を与えるかなど、実証的な調査が現在も行われています。

1点目については、依然として文学の経験的研究で問題点として指摘される事柄です。著者は、empiricalと名乗っておきながら、メタ理論的な議論ばかりに終始している研究者もいるとのことです(文学の経験的研究の中心となるIGELという学会には、少なくともそのようなメタ理論的な研究者と本当の意味で実証的な研究者の2派がいると述べられています)。そのような研究者は本当の意味で実証的な研究に対して、あたかもポスト構造主義の研究者が文学の経験的研究に対して向けるのと同じような言葉で、批判の言葉を向けていることを問題視しています。ちなみに、この論文を書いた著者は本当の意味での実証的な研究者ですが、彼が学会で経験した様々な理不尽がかなりはっきりと語られています。文学読解を実証的に研究することへのアレルギー反応は、文学の経験的研究内部でも大変強いものがあったようです。

著者は最後に、今後の研究について次のような提言をおこなっています。

"What I think we need is (1) a stronger focus on rigorous empirical studies of literary processes (for instance, in comprehension, production, reviewing, dissemination, and so on) and (2) more efforts to theoretically demonstrate the continuity in literary research from Formalism and Structuralism to empirical research." (pp. 325-326)

 

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