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2020年5月15日 (金)

P.C.Hogan(2014).「Literary Brains: Neuroscience, Criticism, and Theory」を読む(『Literature Compass』)

(1) 脳科学研究で示されているどのような概念や発見が文学研究と関わるのか、(2) 文学研究の目的として挙げられれている項目のそれぞれが脳科学研究によってどのようにより充実できるのか、(3) 文学研究は脳科学研究にどのように貢献するのか、という3点について議論されています。やや情報が古くなってはいますが、文学研究は脳科学研究とどのように付き合ってゆけばよいのかということについては、現在でも非常に有益な指摘がなされています。

Hogan, P. C. (2014). Literary brains: Neuroscience, criticism, and theory. Literature Compass, 11 (4), 293-304. 

概要

著者は、脳科学研究で明らかにされている事柄のうち、文学研究と関わりそうなこととして、以下の事柄を指摘しています。

  • 空間表象プロセス
  • メタ機能(複数のネットワークから出力された情報の統合システム)
  • 興奮を高めるコネクションと抑えるコネクション
  • 記憶システム(記憶の内容は経験などによって変化するという立場のモデル)
  • Theories of situated cognition

また、文学研究には以下の4つの目的があるとしています(p. 297)。この記事では省略しますが、King Learの分析を例に、脳科学研究の知見がどのように各目的の研究を充実させることができるかが示されています。ただ、4点目についてのみ簡単に述べておきますと、脳科学をベースとしたテーマを設定したり、記号化プロセスをとらえ直したり、テキストに書かれていない情報(興奮を抑えるシステムによって最終的に読者の頭の中に顕在化しなかった情報など)を考察に組み込むなどして、面白い研究ができるのではないかとしています。

  • aesthetic evaluation of works and the establishment of principles for such evaluation
  • ethical and political evaluation of works and the establishment of principles for such evaluation
  • isolation of broad patterns across works and explanation of those patterns
  • interpretation of particular works and the establishment of principles for such interpretation

また、著者は脳科学的な研究が文学研究の課題をすべて解決するわけではないということも強調しています。文学研究は、伝記的情報や文化的情報なども参照する必要が当然あり、それらと組み合わせながら脳科学的な知見も利用するというスタンスでいなければならないとしています。

最後に、文学研究は脳科学研究にも資するという点も指摘されています。ただし、脳科学向けに文学研究の形を変える必要があるというわけではなく、今のままの研究を進めていくことが大切だとしています。そのような研究を続けていくことこそが脳科学研究にとって大きく資することになるとしています。この点は大変興味深い指摘だと思いました。

 

 

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