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2018年2月21日 (水)

『映像文化の社会学』(長谷正人(編),有斐閣)の論文

映像文化を会学の観点から考察した論文集になります。大衆的な映像が扱われている以下の3編の論文を読みました。
 
●加藤裕治(2016).「スターという映像文化」.In 長谷正人(編),『映像文化の社会学』(pp. 217-231).有斐閣.
 
スターという存在がどのように生まれ、そして観客との関連性が時代とともにどのように変化してきたのかが初期映画から今日の地下アイドルまでの流れの中で考察されています。
 
●前川修(2016).「心霊現象という映像文化」.In 長谷正人(編),『映像文化の社会学』(pp. 233-248).有斐閣.
 
心霊写真が時代とともにどのように変化し、その時代の画像技術等にどのように影響を受けてきたのか、さらに心霊の表象(提示)のされ方がどのように変化してきたのか、といったことが時代を追って考察されています。
 
また、言語に関する情報として以下の指摘はとても興味深く思いました。
 
「1970年代から1980年代にかけての心霊現象の普及の歴史は因縁話を欠落させていく歴史である。本来、そうした因縁話は怪談という文学の王の末裔だった。しかし、それが心霊写真ブームによって大衆化され、非文学化され、レトリックを欠如させていく。最終的に、物語(言葉)が写真に従属し、人びとは「写真性失語症」に陥ることになる。」(p. 240)
 
●増田展大(2016).「アニメーションという映像文化」.In 長谷正人(編),『映像文化の社会学』(pp. 249-267).有斐閣.
 
「アニメーション」とは語源的には「生気を与えること」「動き」といった意味を指すということを出発点として、この観点からこれまでのアニメ映像技術がその初期のものから今日のCGIやVFXにわたって考察されています。

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2018年2月20日 (火)

『第89回大会Proceedings』(日本英文学会)の記事

今年度開催された日本英文学会第89回全国大会及び、昨年度の地区学会発表のプロシーディングス原稿が1冊にまとめられた冊子の中から自分の研究と関連する記事をいくつか紹介します。
 
●笠原順路(2017).「英詩を文法的に読む愉しみ」.『第89回大会Proceedings:The 89th General Meeting of The English Literary Society of Japan, 20-21 May 2017 (付 2016年度支部大会Proceedings)』(pp. 51-52).日本英文学会.
 
英語詩を文法的に読むことのお手本のような論文で、とても勉強になります。文学教材と文法学習の接点についていろいろと考えを巡らすことができました。
 
●原田範行(2017).「「教室の英文学」を考える:「教室の英文学」という方法論」.『第89回大会Proceedings:The 89th General Meeting of The English Literary Society of Japan, 20-21 May 2017 (付 2016年度支部大会Proceedings)』(pp. 199-200).日本英文学会.
 
文学入門書に着目しながらOscar WildとWilliam Henry Hudsonの「文学」に対する考えを中心に論が展開され、さらにliteratureという語の定義の変遷も示されています。Wildは、文学を使った教育が知る価値のないことを教える教育になっていないかどうか危惧していたことが紹介されています。また、19世紀末から20世紀初頭の時点で、Hudsonは読みとしての文学性という考え方を示していたことも示されています。20世紀初頭における英語圏での「文学とは何か」という考えを知ることができる貴重な文献です。
 
●田尻芳樹(2017).「批評を教える」.『第89回大会Proceedings:The 89th General Meeting of The English Literary Society of Japan, 20-21 May 2017 (付 2016年度支部大会Proceedings)』(pp. 201-202).日本英文学会.
 
文学批評は、その性質上様々な学問領域(そしてサブカルチャーなども)を横断して考える必要があり、教育という場では総合学としての機能が期待される点が指摘されていました。
 
●津田正(2017).「教室の英文学:英文学会が教育について語ることについて」.『第89回大会Proceedings:The 89th General Meeting of The English Literary Society of Japan, 20-21 May 2017 (付 2016年度支部大会Proceedings)』(pp. 203-204).日本英文学会.
 
教育研究というと「目標設定→授業実践→効果の検証」という流れになりがちで、ついつい指導手順を中心に考えてしまいがちです。しかし、文学教材はこのような流れにはなじみにくい特性があります。英文学会が教育について語る際には、指導手順だけにとらわれず、もっと様々な角度から様々な方法で教育について語っていく必要があることが指摘されていました。非常に重要な指摘であり、文学を使った英語教育研究を行う際には肝に銘じておくべきことであると思います。
 
●張替涼子(2017).「教室の中の英文学:教室に英文学を」.『第89回大会Proceedings:The 89th General Meeting of The English Literary Society of Japan, 20-21 May 2017 (付 2016年度支部大会Proceedings)』(pp. 205-206).日本英文学会.
 
イギリスの大学での授業形態が紹介され、そこから日本でのこれからの文学教育の可能性が検討されています。いろいろと考えを巡らすことができました。
 
●Barnaby, R.(2017).「教室の英文学を考える:A Room for One's Own」.『第89回大会Proceedings:The 89th General Meeting of The English Literary Society of Japan, 20-21 May 2017 (付 2016年度支部大会Proceedings)』(pp. 207-208).日本英文学会.
 
批評理論や翻訳の文学教育における有効性が指摘されています。特に翻訳に関してはEzra PoundのCathayを使うことが提案されており(中国古典詩の英訳で、そこに含まれる奇妙な解釈などが授業で使えるとのことです)、とても面白く思いました。

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