« 藤田崇夫・鈴木繁幸・松倉信幸(編)(2010).『英語と英語教育の眺望:The Future of English Studies』内の文法関連論文を読む(DTP出版) | トップページ | 久世恭子(2016).「精読の授業における文学的テクストの特徴-A Room of One's Ownに対する学習者の関心と反応-」を読む(斎藤兆史・北和丈・城座沙蘭・高橋和子(編),『英語へのまなざし―斎藤英学塾10周年記念論集』,ひつじ書房) »

2017年9月12日 (火)

高橋和子(2016).「「コミュニケーション英語Ⅰ」・「読むことを中心とした活動」と文学教材―物語文を中心に―」を読む(斎藤兆史・北和丈・城座沙蘭・高橋和子(編),『英語へのまなざし―斎藤英学塾10周年記念論集』,ひつじ書房)

現行の高等学校英語教科書(コミュニケーション英語Ⅰ)に含まれる文学教材の設問分析を通して、その問題点を指摘し、さらに文学教材を活かすための具体的な設問案が提示されています。非常に具体的な論文で勉強になります。
 
高橋和子(2016).「「コミュニケーション英語Ⅰ」・「読むことを中心とした活動」と文学教材―物語文を中心に―」.In 斎藤兆史・北和丈・城座沙蘭・高橋和子(編),『英語へのまなざし―斎藤英学塾10周年記念論集』(pp. 345-375).ひつじ書房.
 
概要
著者は学習指導要領での物語の記載について整理をした後、本論文における「物語」の意味合いを整理します。その上で、コミュニケーション英語採択率上位10種を対象に、文学教材を抽出した上で、Nuttall (2005) の枠組みを確認ののち、教科書内の文学教材に付されている設問を分析しています。著者は正課の教材と正課外の教材に分けて分析をしています。正課の教材に付されている設問を分析したところ、やはり推論問題をが少ないとのことです。
 
以上の議論を踏まえたうえで、著者は文学教材を活用するための設問例を示しています。詳細は省きますが、物語の基本要素に関する設問、物語の特色に関する設問、personal response (Nuttall (2005) の5つ目のタイプ)の活用、推論設問(Nuttall (2005) の3つ目のタイプ)の活用、が提案されています。特に推論設問に関しては、国語科教育におけるPISA型読解を目指した「解釈のアブダクション・モデル」を援用したものが提案されていました。
 
本章の最後の箇所では、物語の定義はあいまいにならざるを得ない点も指摘されていました。
 
著者は結論部分で、物語は「明示的な読み取りを行う活動が実践可能な教材であるとともに、推論を行ったり、自分の考えをまとめたりする活動にも適した教材である」(p. 373)と述べています。著者は、文学研究者に向けて、「文学教材を如何に読むべきかを検討し、同教材の特色を活かしながらも現場に即した授業案を1つ1つ提示していくこと」(p. 373)、「現行の検定教科書の中には、それと気づかぬうちに物語性が含まれた教材がある可能性を明らかにし、これらの物語性を活かした活動例を示していくこと」(p. 373)がコミュニケーション重視の英語教育に貢献することになると述べています。そして、このような取り組みが、ひいては「文学教材に対する学習者の意識を変え、様々な教材を通して英語を学ぼうとする姿勢を育むことに繋がっていくのではないか」(p. 373)と述べています。

|

« 藤田崇夫・鈴木繁幸・松倉信幸(編)(2010).『英語と英語教育の眺望:The Future of English Studies』内の文法関連論文を読む(DTP出版) | トップページ | 久世恭子(2016).「精読の授業における文学的テクストの特徴-A Room of One's Ownに対する学習者の関心と反応-」を読む(斎藤兆史・北和丈・城座沙蘭・高橋和子(編),『英語へのまなざし―斎藤英学塾10周年記念論集』,ひつじ書房) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 藤田崇夫・鈴木繁幸・松倉信幸(編)(2010).『英語と英語教育の眺望:The Future of English Studies』内の文法関連論文を読む(DTP出版) | トップページ | 久世恭子(2016).「精読の授業における文学的テクストの特徴-A Room of One's Ownに対する学習者の関心と反応-」を読む(斎藤兆史・北和丈・城座沙蘭・高橋和子(編),『英語へのまなざし―斎藤英学塾10周年記念論集』,ひつじ書房) »