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2017年5月30日 (火)

宮脇正孝(2012).「5文型の源流を辿る:C. T. Onions, An Advanced English Syntax (1904) を超えて」を読む(『専修人文論集』)

5文型の起源に関して、Cooper and Sonnenschein (1889) とOnions (1904) の関連性がとてもわかりやすく説明されています。また、なぜOnions (1904) の方が有名になっているのかということも理解することができます。

宮脇正孝(2012).「5文型の源流を辿る:C. T. Onions, An Advanced English Syntax (1904) を超えて」.『専修人文論集』,90,437-465.

概要

Sonnenscheinは、様々な言語を教育する際に、その文法用語がばらばらであることをとても問題視していました。そこで、言語を超えて文法用語を統一することを試み、バーミンガムを拠点に文法協会を設立しました。そして、そのような活動の中で「述部の5形式」というものを提案しました。これを最初に提示した文法書がCooper and Sonnenschein (1889) になるとのことです。これは、並行文法シリーズ(Parallel Grammar Series:様々な言語を同じ枠組みで記述しようとした一連の文法書のシリーズ)の中の1冊だそうで、Onions (1904) も同じくこのシリーズの1冊となるそうです。ですので、実際には「述部の5形式」を特定の個人の創案に帰することは難しいと著者は述べています(p. 451)。

なお、同シリーズで英語以外の文法を扱った書籍は、それぞれ第1部と第2部から構成されていたそうで、第1部は「意味は文および文の各部においてどのように表現されているか」、第2部は「語および語の諸形態はどのように用いられているか」を扱っていたそうです。それに対して、英語を扱ったCooper and sonnenshein (1889) では第1部に相当する部分しかなかったそうで(ただし、同シリーズのどの言語の文法書よりも内容が詳しく、かつそのシリーズの全書で用いる用語と枠組みの解説書としての役割を果たしていたそうです)、Sonnenscheinは教え子のOnionsに依頼して、英語の統語論に関する書籍を同シリーズにさらに1冊加えたという背景があるそうです。ですので、実際にCooper and Sonnenshein (1889) とOnions (1904) の「述部の5形式」の解説はほとんど記述が同じになっているとのことでした。ただし、Onions (1904) はCooper and Sonnenshein (1889) に対して、上級編という位置づけとなっています。

なお、興味深いことに、その後のSonnensheinの著作には「述部の5形式」は登場しないそうで、結局細江(1917)はOnions (1904) などから刺激を受け、今日の英語教育に5文型が定着することになったと指摘されていました。結果として、5文型の起源がOnions (1904) であるとする考えが広まったようです。

ちなみに、並行文法シリーズでは、「補語」ではなく「叙述形容詞(predicate-adjective)」という語が用いられていたという点も面白いです。

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2017年5月14日 (日)

M.Burke,A.Kumičová,A.Mangen,& T.Schilhab(2016).「Empathy at the Confluence of Neuroscience and Empirical Literary Studies」を読む(『Scientific Study of Literature』)

文学の経験的研究におけるempathy関連の研究をレビューした論文になります。哲学者による理論的な研究のレビューからスタートし、現在の文学理論、文学の経験的研究、心理学・神経科学、でのempathyの研究成果が整理されています。

Burke, M., Kumičová, A., Mangen, A., & Schilhab, T. (2016). Empathy at the confluence of neuroscience and empirical literary studies. Scientific Study of Literature, 6 (1), 6-41.

概要

様々な研究が紹介されていますが、論文全体を通して、"the capacity to share the feelings of others"(または"emotional empathy")(ともにp. 21)と、"the capacity to represent others' intentions and beliefs"(または"Theory of Mind" "cognitive empathy")(いずれもp. 21)の2つの立場があることが大きく取り上げられていたように思います。

以下、個々の研究に関する紹介で、個人的に面白く感じたものを挙げておきます。

  1. Keen (2007) の研究:"Keen suggests that novels are possibly distincive in their capacity to elicit empathy by virtue of being fictitious (Keen, 2007, p. 4), rather than exclusively or primarily for their aesthetic merit. According to Keen, the reader's awareness of reading a piece of fiction, devoid of real-world demands for immediate action on behalf of the wronged, is precisely what could make novels a particluarly efficient arena for emotional training. However, Keen is reluctant to endorse strong generalizations about the long-term moral consequences of such training. (pp. 12-13)
  2. Caracciolo (2014) の研究:"On the cline from word to paragraph level, the typical features of consciousness-focused narration range from the use of certain pronouns and verbs of experiencing, through expressive punctuation and experiential metaphors, to internalize focalization (Caracciolo, 2014b, pp. 104-109, 125-129)" (p. 14)
  3. 同じくCaracciolo (2014) の研究:"it is possible to enact a character's bodily sensations while consciously retaining third-person distance from the character's feelings, beliefs, or attitudes. At the later point in the same narrative and reading session, the reverse may become true." (pp. 13-14) / "first-person emphatic enactment of one particular emotion or sensation does not preclude a third-person, more distanced perspective on other aspects of a story" (p. 15)
  4. Koopman (2015) の研究:"maybe it was the excessive foregrounded features that are often present in literary fictive texts that affect the quality of the emotions that are generated, something that is not an issue in the often less-foregrounded fluidity of real-life narrative texts." (p. 17) ←Jacobsらとは異なる見解ですね。
  5. Mangen & Kuiken (2014) の研究 :"the booklet readers were more likely to report a close association between transportation and empathy. This was not the case with the iPad, suggesting that the ergonomics of the reading medium might be of importance for empathy." (pp. 20-21)→さらに、pp. 30-32には、文学作品のe-readingや、紙媒体の読解におけるpage-turningが与える影響を研究する必要性が強く主張されています
  6. 様々な研究成果に基づいたまとめ:"While emtional empathy - to feel what another is feeling - occurs more or less automatically and emerges earlier phylogenetically, cognitive empathy - to think what another is thinking - depends more on ontogenetic and developmental aspects (e.g. Stueber, 2012) and may be specific to humans (Call & Tomasello, 2008; de Waal & Ferrari, 2010)" (pp. 22-23)

文学読解の情意面の研究は、哲学・文学理論・心理学・脳科学といった領域が協力し合う形で、急成長しているようです。

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