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2016年5月25日 (水)

J.Hakemulder(2008).「Imaging What Could Happen: Effects of Taking the Role of a Character on Social Cognition」を読む(S.Zyngier,M.Bortolussi,A.Chesnokova,&J.Auracher(編),『Directions in Empirical Literary Studies: In Honor of Wille van Peer』,John Benjamins)

文学作品読解中に登場人物の立場に立つことによって、その登場人物の属す社会的グループの理解が促進されるというHakemulder(2000)の追調査となります。Hakemulderでは、読者とあまり日常生活で接点がない社会グループに属す登場人物が出てくる作品を用いて調査を行いましたが、今回は日常生活で読者と関わりのある社会グループの登場人物が出てくる作品が使用されています。また、調査対象が、大学生と高校生(Hakumulder (2000) では大学生のみ)となっています。異文化理解における文学作品の利用に大きく関わる調査研究です。

Hakumulder, J. (2008). Imaging what could happen: Effects of taking the role of a character on social cognition. In S. Zyngier, M. Bortolussi, A. Chesnokova, & J. Auracher (Eds.), Directions in empirical literary studies: In honor of Willie van Peer (pp. 139-153). Amsterdam: John Benjamins.

概要

今回の調査では、調査参加者は、以下の4つの読解条件がランダムに与えられ、読解終了後にアンケートに答えることで、どの程度登場人物と似た考えを持つようになるかが調査されています。

  1. control group:他の3条件で読む作品とは無関係の文学作品を読むグループ
  2. essay group:以下の2条件で読む作品と共通したテーマのエッセーを読むグループ
  3. role-taking group:作品の登場人物の立場に立って作品を読むように指示されたグループ
  4. diversion group:条件3と同じ作品を読みつつも、テクスト内の構造にチェックをしながら読むように指示されたグループ

この調査の結果、大学生においては、条件3が最も登場人物と近い考えを示すようになり、条件2は最も登場人物の考えに影響をされないという結果となりました。

しかしながら、高校生を対象にした調査(エッセーや指示などは、高校生のレベルに合わせて若干変更されています)では、条件1が条件3よりも調査参加者に影響を与えているという結果となりました。しかしながら、条件2は、条件3よりもこの数値が低いという点では大学生を対象とした調査と同じでした。

なお、調査で用いられた作品では、結婚相手を親に決められた登場人物が、親に逆らってかけおちをするという筋書きなのですが、高校生はまだ親に大きく依存しているため、大学生との結果に違いが出た可能性があると著者は分析しています。

以上の結果から、著書は(まだ調査を積み重ねる必要があるということは十分に認識しつつも)、文学作品の他者理解や異文化理解への活用を強調するとともに、読者がどのような環境に置かれているのかということも十分に認識してその活用を考えていく必要があると述べていました。

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