« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »

2016年5月30日 (月)

S.Curtiss et al. (1973).「Language Acquisition After the Critical Period: Genie as of April, 1973」を読む(C.Corum他(編),『Papers from the Ninth Regional Meeting Chicago Linguistic Society, April 13-15, 1973』,Chicago: Chicago Linguistic Society)

Genieの言語習得の当時の現況が報告されています。

Curtiss, S., Krashen, S., Fromkin, V., Rigler, D., & Rigler M. (1973). Language acquisition after the critical peroid: Genie as of April, 1973.  In C. Corum, T. C. Smith-Stark, & A. Weiser (Eds.), Papers from the Ninth Regional Meeting Chicago Linguistic Society, April 13-15, 1973 (pp. 98-103). Chicago: Chicago Linguistic Society.

概要

この論文では、当時のGenieの言語習得の進捗状況が細かく報告され、さらに今後検証されるべき仮説として次の2つの点が挙げられていました。

  1. Genieは、言語習得の臨界期を過ぎてしまったため、右脳で言語習得をしようとしている可能性がある点
  2. 右脳による言語習得は左脳による言語習得ほどうまくはいかない可能性がある点

もう古い論文ですので、これらの仮説に対して著者らがこの後にどういった結論を出したのかは、別に調べてみる必要があります。

| | コメント (0)

2016年5月27日 (金)

R.Lakoff(1973).「The Logic of Politeness: Or, Minding Your P's and Q's」を読む(C.Corum,T.C.Smith-Stark,& A.Weiser(編),『Papers from the Ninth Regional Meeting Chicago Linguistic Society, April 13-15, 1973』,Chicago: Chicago Linguistic Society)

Robin Lakoffによるポライトネス理論です。会話の公理とポライトネスの関係性について議論されています。現在の語用論研究の大方の立場と同様に、ポライトネスの方が会話の公理よりも上位の規則であると考えられています。

Lakoff, R. (1973). The logic of politeness: Or, minding your p's and q's. In C. Corum, T. C. Smith-Stark, & A. Weiser (Eds.), Papers from the Ninth Regional Meeting Chicago Linguistic Society, April 13-15, 1973 (pp. 292-305). Chicago: Chicago Linguistic Society.

概要

著者は、発話には統語規則や意味論的規則だけでなく、語用論的規則も関与していると主張し、その規則の素描を試みています。

まず、著者はRules of Pragmatic Competenceとして以下の2項目を挙げます。

  1. Be clear
  2. Be polite

上記1については、GriceによるRules of Convesationが関わるとしています。そして、上記2に関わる規則として次のRules of Politenessを提案しています。

  1. Don't impose
  2. Give options
  3. Make A feel good - be friendly

著者によると、Rules of Conversationは、Rules of Politenessの1の下位規則として位置づけることができると考えています(つまり、ポライトネスに関わる下位規則として位置づける)。その理由として次のように述べています。

"We can look at the rules of conversation as subcases of Rule 1: their purpose is to get the message communicated in the shortest time with the least difficulty: that is, to avoide imposition on the addressee (by wasting his time with meandering or trivia, or confusing him and making him look bad)." (p. 303)

また、特に性や排泄、所得などを話題にする際に、Rule of Politenessの1では専門用語などの使用(コノテーションや感情的要素が入りずらい客観的な表現の使用)が関わり、Rules of Politeness 2では婉曲語法が関わると述べられていました。

さらに、著者が提案するRules of Politenessはある程度の普遍性もあるとしています。ただし、それぞれの文化圏において、どのような状況で1~3のどの規則が優先されるかは異なっているとも述べていました。

加えて、ポライトネスに関わる規則は言語だけでなく、人間の行動全般にも一般化が可能であるとも述べていました。

| | コメント (3)

2016年5月25日 (水)

J.Hakemulder(2008).「Imaging What Could Happen: Effects of Taking the Role of a Character on Social Cognition」を読む(S.Zyngier,M.Bortolussi,A.Chesnokova,&J.Auracher(編),『Directions in Empirical Literary Studies: In Honor of Wille van Peer』,John Benjamins)

文学作品読解中に登場人物の立場に立つことによって、その登場人物の属す社会的グループの理解が促進されるというHakemulder(2000)の追調査となります。Hakemulderでは、読者とあまり日常生活で接点がない社会グループに属す登場人物が出てくる作品を用いて調査を行いましたが、今回は日常生活で読者と関わりのある社会グループの登場人物が出てくる作品が使用されています。また、調査対象が、大学生と高校生(Hakumulder (2000) では大学生のみ)となっています。異文化理解における文学作品の利用に大きく関わる調査研究です。

Hakumulder, J. (2008). Imaging what could happen: Effects of taking the role of a character on social cognition. In S. Zyngier, M. Bortolussi, A. Chesnokova, & J. Auracher (Eds.), Directions in empirical literary studies: In honor of Willie van Peer (pp. 139-153). Amsterdam: John Benjamins.

概要

今回の調査では、調査参加者は、以下の4つの読解条件がランダムに与えられ、読解終了後にアンケートに答えることで、どの程度登場人物と似た考えを持つようになるかが調査されています。

  1. control group:他の3条件で読む作品とは無関係の文学作品を読むグループ
  2. essay group:以下の2条件で読む作品と共通したテーマのエッセーを読むグループ
  3. role-taking group:作品の登場人物の立場に立って作品を読むように指示されたグループ
  4. diversion group:条件3と同じ作品を読みつつも、テクスト内の構造にチェックをしながら読むように指示されたグループ

この調査の結果、大学生においては、条件3が最も登場人物と近い考えを示すようになり、条件2は最も登場人物の考えに影響をされないという結果となりました。

しかしながら、高校生を対象にした調査(エッセーや指示などは、高校生のレベルに合わせて若干変更されています)では、条件1が条件3よりも調査参加者に影響を与えているという結果となりました。しかしながら、条件2は、条件3よりもこの数値が低いという点では大学生を対象とした調査と同じでした。

なお、調査で用いられた作品では、結婚相手を親に決められた登場人物が、親に逆らってかけおちをするという筋書きなのですが、高校生はまだ親に大きく依存しているため、大学生との結果に違いが出た可能性があると著者は分析しています。

以上の結果から、著書は(まだ調査を積み重ねる必要があるということは十分に認識しつつも)、文学作品の他者理解や異文化理解への活用を強調するとともに、読者がどのような環境に置かれているのかということも十分に認識してその活用を考えていく必要があると述べていました。

| | コメント (0)

2016年5月18日 (水)

Y.Shen(2008).「Two Levels of Foregrounding in Literary Narratives」を読む(S.Zyngier,M.Bortolussi,A.Chesnokova,&J.Auracher(編),『Directions in Empirical Literary Studies: In Honor of Wille van Peer』,John Benjamins)

言語学や談話分析で使用されるforegroundingという概念と文学理論におけるforegroundingの概念の違いを確認した後、文学テクストにおいて両概念が交わる面白い事例を紹介し、前者は後者の分析において重要なツールとなると述べられていました。

Shen, Y. (2008). Two levels of foregrounding in literary narratives. In S. Zyngier, M. Bortolussi, A. Chesnokova, & J. Auracher (Eds.), Directions in empirical literary studies: In honor of Willie van Peer (pp. 89-102). Amsterdam: John Benjamins.

概要

言語学や談話分析では、foregroundingは、焦点の中心となるような情報(新情報であったり、驚くべき情報など)を指します。著者は、文学作品においては、foregrounding(言語学や談話分析におけるforegrounding)であるにも拘わらず、文や談話における背景的位置に置かれ、逸脱(つまり文学理論におけるforegrounding)が構成される例があるとしています。著者は、数例そのような事例を紹介し、そのことによってどのような文学的効果が得られているか検討しています。例えば、「ある人物が自殺した」という情報が背景的位置に置かれ、結果としてテクスト全体が非常に無機質な世界観を作り上げている例などが挙げられていました。

| | コメント (0)

2016年5月17日 (火)

D.S.Miall(2008).「Foregrounding and Feeling in Response to Narrative」を読む(S.Zyngier,M.Bortolussi,A.Chesnokova,&J.Auracher(編),『Directions in Empirical Literary Studies: In Honor of Wille van Peer』,John Benjamins)

著者が、以前 Katherine Mansfieldの「The Wrong House」を使用して行った調査のデータを、情意の面から再分析し、論文を通して、文学作品読解における感情の重要性が確認されています。

Miall, D. S. (2008). Foregrounding and feeling in response to narrative. In S. Zyngier, M. Bortolussi, A. Chesnokova, & J. Auracher (Eds.), Directions in empirical literary studies: In honor of Willie van Peer (pp. 89-102). Amsterdam: John Benjamins.

概要

著者は、感情の重要性を示す証拠として次のような点を挙げています。

  1. "Since existing schemata are inadequate for understanding at such moments, feeling arising from the moment of foregrounding would become the vehicle for seeking a new understanding; this might take some time to come into place. If this hypothesis is correct, then near the beginning of such a phase, stronger feeling in a given segment would be marked by a lengthened reading time, since feeling here would signal greater uncertainty and the search for meaning. At the end of the phase, on the other hand, feeling is the vehicle for new understanding, thus segments with stronger feeling would direct reading, making it more certain; here, stronger feeling should be marked by a shorter reading time." (pp. 90-91) (このことは、この論文でのデータの再分析で実証されました)
  2. 物語内のエピソード、視点、音声パターンの変化に応じて感情も変化する
  3. 感情によって、"generalization through cross-domain, anticipatory, and self-referential processes" (p. 100)、"the creation of ad hoc categories" (p. 100)、"the recontextualization of one feeling by another in catharsis" (p. 100) が促進される

また、Oatleyの理論や、インドの詩学におけるrasaという概念を援用しながら、文学における感情は文学作品独特のものであるが(日常における感情と異なるが)、作品内でそれを経験すると読者には現実味を帯びたものとなる(そして、現実の中で読者に影響を及ぼす)という一種のパラドックス的特性が指摘されていました。

| | コメント (0)

2016年5月14日 (土)

P.Dixon&M.Bortolussi(2008).「Textual and Extra-Textual Manipulations in the Empirical Study of Literary Response」を読む(S.Zyngier,M.Bortolussi,A.Chesnokova,&J.Auracher(編),『Directions in Empirical Literary Studies: In Honor of Wille van Peer』,John Benjamins)

調査方法に関する論文です。調査研究に慣れている人にとっては当たり前の内容になるかもしれません。

Dixon, P., & Bortolussi, M. (2008). Textual and extra-textual manipulations in the empirical study of literary response. In S. Zyngier, M. Bortolussi, A. Chesnokova, & J. Auracher (Eds.), Directions in empirical literary studies: In honor of Willie van Peer (pp. 75-87). Amsterdam: John Benjamins.

概要

この論文で重要なのは以下の引用箇所かと思われます。

"the materials used in an experiment should be regarded as representative of only limited population of comparable meterials, and strictly speaking, the conclusions one draws from an empirical study only really apply to that limited population." (p. 83)

"textual manipulations can be combined with counterbalanced quasi-experimental manipulations, and direct manipulations of the text can be contrasted with manipulations mediated by unobservable variables in the reader" (p. 87)

| | コメント (0)

2016年5月11日 (水)

A.D.Nijhof & R.M.Willems(2015).「Simulating Fiction: Individual Differences in Literature Comprehension Revealed With fMRI」を読む(『PLoS ONE』)

大人向けに作られた文学作品を聴解する際に、2タイプのシュミレーション様式があることがfMRIを使って示されています。オランダ語母語話者の母語による文学作品読解処理の調査です。

Nijhof, A. D., & Willems, R. M. (2015). Simulating fiction: Individual differences in literature comprehension revealed with fMRI. PLoS ONE, 10 (2), 1-17.

概要

この論文では、文学作品を読む際に、aMPFCを活性化させながら登場人物の考えや意図を理解することを通してシュミレーションをする読者と、感覚運動に関わる部位を活性化させながら行動に関わる情報を理解することを通してシュミレーションする読者がいることが示されていました。つまり、フィクションを理解する際に、大きく2タイプのシュミレーションの方法があるということになります。ただし、各読者はこれらを組み合わせて情報処理をしており、好みに応じて一方が他方よりも優勢に機能していると考えられます。なお、どちらのタイプのシュミレーションを行おうとも、作品内容に関する記憶テストでは違いは見られなかったとのことでした。

| | コメント (0)

2016年5月 6日 (金)

楠瀬淳三(1984).「詩的表現」を読む(F.ロボ・津田葵・楠瀬淳三(編),『英語コミュニケーション論』,大修館書店)

楠瀬淳三(1984).「詩的表現」.In F.ロボ・津田葵・楠瀬淳三(編),『英語コミュニケーション論』(pp. 161-198).大修館書店.

感想

日常会話などの中に潜む詩的表現について整理されています。格言や広告などから具体例が引かれています。入門的な章ではありますが、かなり広範な現象が扱われています。既にこの領域に詳しい人でも、具体例などは楽しめると思います。

| | コメント (0)

« 2016年4月 | トップページ | 2016年6月 »