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2016年4月27日 (水)

D.Kuiken,P.Campbell,& P.Sopčák(2012).「The Experiencing Questionnaire: Locating Exceptional Reading Moments」を読む(『Scientific Study of Literature』)

文学読解プロセスを捉えるための質問紙The Experiencing Questionnaireの妥当化が実証的に検証されています。結論としては、この質問紙の妥当性が実証されました。

Kuiken, D., Campbell, P., & Sopčák, P. (2012). The Experiencing Questionnaire: Locating exceptional reading moments, Scientific Study of Literature, 2 (2), 243-272.

概要

検証のプロセスにつきましては割愛し、この研究で得られた主な結果のみをまとめておきます。

  1. この質問紙によって、異なる文学読解様式を区別できた(objective engagement、subjective engagement、secular enactive engagement、spiritual enactive engagement)
  2. 質問用紙内の複数のサブスケールを組み合わせることで、文学読解中で最も不安を感じたり最も魅了された瞬間を捉えることができる可能性が示唆された

文学読解に対する一般的な姿勢を問うLiterary Response Questionnaire(Miall and Kuiken, 1995)と組み合わせることで様々な面白い調査ができそうです(この論文でも使用されています)。なお、付録には、The Experiencing Questionnaireのすべての質問紙が掲載されています。

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2016年4月21日 (木)

J.A.エイバソールド&M.L.フィールド(1997/2010).『読みの学習者から読みの教師へ:第2言語(英語)教育の問題点とその術策』(第8章:「文学作品の活用」)を読む(多田稔・石野はるみ・菅田浩一・古荘智子・西田晴美・小林清子・依岡道子・安田優(訳),英宝社)

文学作品を英語の授業で初めて使おうと考えている教師のために、授業計画における留意点が示されています。したがって、内容としてはかなり基本的な事柄となります。

エイバソールド,J.A.,&フィールド,M.L.(2010).『読みの学習者から読みの教師へ:第2言語(英語)教育の問題点とその術策』(多田稔・石野はるみ・菅田浩一・古荘智子・西田晴美・小林清子・依岡道子・安田優(訳)).英宝社.(原著は1997年出版)

概要

この章では次の点が強調されていました。

  1. どのような作品を用いるにしても、その教材を用いる理由は学習者の言語スキル・言語能力の向上であるべきである
  2. 文学作品を最大限に活用するためには、教師は文学作品の様々な特徴(情報のテクストとの違い)について十分に知識を持っておく必要がある
  3. 文学作品を使用するためには、それにふさわしい読み方を学習者が習得できるように活動や指導を調整することが必要である(情報のテクストの読み方を適用するといったことのないようにするべきである)
  4. 教材は、作品に盛られた文化的内容、作品内容と学習者の生活との関連性、言語レベルを考慮して選定すべきである
  5. 実際の授業計画では、その作品が本当に学習者の英語学習に寄与するものであるかどうか、学習者はその作品の文化的前提を理解することができるか、ということに特別に注意するべきである。

なお、情報のテクストと物語のテクストでのプレ・リーディング活動の違いが対照して整理されています(pp. 213-214)。

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池上嘉彦(1996).「意味と文学」を読む(池上嘉彦(編),『英語の意味』,大修館書店)

文学の言語の特徴について、専門用語をほとんど使うことなく、とても分かりやすく説明されています。日常的な言語との対比で説明されています。英語学入門の授業などで、文学作品の言語について導入する際に非常に有益だと思います。

池上嘉彦(1996).「意味と文学」.In 池上嘉彦(編),『英語の意味』(pp. 177-195).大修館書店.

概要

以下、文学の言語の重要な特徴だと思います。

  1. 経験や内容を言葉で指すのではなく、文学ではことばが先行して経験や内容を作り出す(p. 181)
  2. 詩のことばは、言語の記号性を極端に壊すようなことはせずに、「それでいて日常の「記号化」したことばに揺さぶりをかけるという形をとって現れてくる。日常のことばから逸脱することによって、語形と語義の間の硬直化したつながりを緩める。あるいは対応の仕方を組み替えてみる――こうした言語上の操作を通して、詩人は新しい意味を生む<ことば>のさらなる可能性を啓示する。」(p. 183)。
  3. 文学作品ではことばは予測性が低く、次にどのような語が来るか予想することが難しい。したがって、読者に常に緊張を強いることになり、日常言語を処理する場合よりもはるかに多くの注意を言語に向けることになる。結果として、読者はことばそのものの存在を強く意識することになる。(p. 185)

また、文学作品では意味が重層的になるということを指摘し、比喩、掛詞、語源の復活、間テクスト性に言及しています。特に、比喩と語源の復活に関して、次の指摘は非常に重要です。

「比喩が日常言語での「原義」に新しい「転義」を重ねるのに対し、語源の復活は日常言語で慣用化してしまっている意味に、それを「転義」とするような、先行する時代の「原義」を持ち出してきて重ね合わせるということになる。」(p. 190)

また、広告の言葉と詩の言葉が似ることについては次のように説明しています。

「広告のことばには、売るべき商品が実際以上に魅力的に思えるよう、虚構としてのイメージを創り出すことが期待されている。当然、日常のことばを超える新しい可能性が求められることになるわけである。」(p. 193)

さらに、子どもの言葉が詩人的になることについても次のような考えが示されています。

「子どもにとっては、毎日が新しい経験の連続である。他方、それを十分賄うだけの語彙はまだ持っていない。手持ちの語彙で処理できる以上の経験をどのように言語化するか――この点では、子どもの置かれている状況は詩人の場合と本質的に違わないわけである。」(p. 194)

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D.S.Miall(2010).「Reading Through the Machine」を読む(W.van Peer,S.Zyngier,& V.Viana(編),『Literary Education and Digital Learning: Methods and Technologies for Humanities Studies』,Information Science Reference)

著者は、"the computer will offer a facility for registering and mapping the responses of readers to the literary texts they read" (p. 188) と述べ、文学教育のためのコンピューターの在り方についてヴィジョンを示しています。

Miall, D. S. (2010). Reading through the machine. In W. van Peer, S. Zyngier, & V. Viana (Eds.), Literary education and digital learning: Methods and technologies for humanities studies (pp. 187-198). New York: Information Science Reference.

概要

著者は、"the computer can help us to co-create and explore the imaginative world of the text" (p. 189) と述べ、一方で読む作品の言語分析結果を読者に提示し(特定の語に関してその作家は他の作品でどのように使用しているのか、といった結果など)、もう一方で読者の作品への反応を記録して、過去に文学作品を読んだ際に類似した反応を示したケースがないか検索可能にする(その反応を示した作品とともにデータを提示する)といったことがコンピューター上で可能になれば、学習者が文学読者として成長する上で非常に効果的であると考えています。さらに、作品への反応を他者とシェアできるような形にすればその効果はより大きなものになると述べています。

文学の経験的研究のこれまでの研究から、読者は最終的な解釈は違っていたとしても、どのような言語的特徴が彼らの読みに影響を与えるのかといったことについてはある程度の規則を立てることが可能であり、読者の反応の記録に関して、ある程度体系だったものを作り上げることは十分に可能であるとしています(逆に全く体系性のないものであったとしたら、読者が過去の反応を参照したとしても、あまり有益ではないでしょう)。

文学作品を使った英語の授業とeラーニングの関係については、まだあまり研究が進んでいませんが、とても示唆的な考えだと思います。

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2016年4月20日 (水)

J.Lüdtke,B.Meyer-Sickendieck,& A.M.Jacobs(2014).「Immersing in the Stillness of an Early Morning: Testing the Mood Empathy Hypothesis of Poetry Reception」を読む(『Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts』)

ドイツ語母語話者に対して、母語で詩を読ませ、その作品の内容が彼らの情意面にどのような影響を及ぼすのかが検証されています。Jacobs(2015)によるneurocognitive model of literary readingの枠組みでの研究となります(ただし、この論文で検証されているのは、Jacobsの枠組みの中で、affective-cognitive levelとbehavioral levelのみとなります)。Jacobs (2015)については、この記事の最後に記載しているリンクをご覧ください。

Lüdtke, J., Meyer-Sickendieck, B., & Jacobs, A. M. (2014). Immersing in the stillness of an early morning: Testing the mood empathy hypothesis of poetry reception. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 8 (3), 363-377.

概要

著者らはthe mood empathy hypothesisを検証しています。この仮説は、"poems expressing moods of persons, situations, or objects should engage readers to mentally simulate and affectively resonate with the depicted state of affairs." (p. 363) というものです。

著者らは、時代や流派を横断する形で、本論文の第2著者がpoetry of moodとして新たにまとめあげた作品群の中から、「朝」をモチーフにした作品6編、「静けさ」をモチーフにした作品6編を使用し、この作品を読ませる前後で、彼らの情意面にどのような変化が起きるかを調査しています。具体的には、Jacobs (2015) の枠組みで言うところの、fast route(背景的情報によって登場人物への共感などを誘発するルート)と、slow route(前景化された言語的技巧などによって作品の美を感じさせるルート)の両方を調査しています。なお、poetry of moodというジャンルに関する詳しい説明は、本論文のp. 365をご参照ください。

以下、この論文で報告されている結果を簡単にまとめておきます。調査方法等は、この論文を直接ご参照ください。

  1. 表層的情報(詩の長さや行数、作品内の語のもつemotional valenceやarousalなど)では作品を読んだ際の読者の情意面の変化を説明することはできない
  2. 境遇など作品内にある(背景的)情報は、読者の心の中に関連した情意を引き起こす。しかも、作品内でのその記述が詳細であればあるほど、より酷似した情意が誘発される。
  3. 前景化された情報を処理すると、美的感情が生起する。様々なタイプの前景化がこの感情を引き起こすと考えられ、さらに処理の容易性と処理の引き伸ばしの双方が関わっていると考えられる。ただし、究極的には、美的感情は前景的情報、背景的情報、読者に関わる要因などのダイナミクスの中で生起することを忘れてはならない。

以上の結果から、著者はこの論文を次のように総括しています。

"the reading and comprehension of poems lead to the emergence of aesthetic as well as nonaesthetic emotional responses, which can be understood as a function of the reader's interaction with the background and foreground features of the text." (p. 373, emphasis in original)

"In line with the mood empathy hypothesis, our study suggests that if a poem (whether it belongs to the category of "poetry of mood" or not) depicts the mood of a person, or the atmosphere of a location or situation, mentally simulating and resonating with the depicted state of affairs can led to the experience of the depicted mood itself, or a similar feeling associated with it. Our results also allow for the assumption that situation embedding is an important feature for mood empathy and mood induction during the reading of poetry." (p. 374)

著者らは、まだ詩の読解における情意面の研究の数は十分ではないとして、今後さらにこの領域の研究が進むことを願っています。

Jacobs, A. M. (2015). Towards a neurocognitive poetics model of literary reading. In R. M. Willems (Ed.), Cognitive neuroscience of natural language use (pp. 135-159). Cambridge: Cambridge University Press. については以下のリンクを参照のこと。
http://takayukinishihara.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/amjacobs2015tow.html

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2016年4月18日 (月)

M.Louwerse,N.Benesh,& B.Zhang(2008).「Computationally Discriminating Literary From Non-Literary Texts」を読む(S.Zyngier,M.Bortolussi,A.Chesnokova,& J.Auracher(編),『Directions in Empirical Literary Studies: In Honor of Wille van Peer』,John Benjamins)

著者自身は非常にnaiveなアプローチであるとしながらも、文学テクストと非文学テクストを簡単に言語的に区別することはできないかどうか試みられています。そしてそのことが現実的に可能であるということが示されています。

Louwerse, M., Benesh, N., & Zhang, B. (2008). Computationally discriminating literary from non-literary texts. In S. Zyngier, M. Bortolussi, A. Chesnokova, & J. Auracher (Eds.), Directions in empirical literary studies: In honor of Willie van Peer (pp. 175-191). Amsterdam: John Benjamins.

概要

文学作品と非文学作品をコーパス言語学的に比較した5つの調査から構成されています。この論文の主な概要は次の通りです。

  1. 作品の意味内容に基づいてクラスター分析をしたところ、文学テクストと非文学テクストを区別することができた(それぞれが別のクラスターにまとまった)
  2. "and in" 、"and with"、"was a" というbigramの生起は文学テクストと非文学テクストで顕著な違いが見られた
  3. 3人称の語り手に関わる代名詞の生起は、文学テクストと非文学テクストで顕著な違いが見られた
  4. 別かつより大きな分量のデータで、上記2、3点目の結果を得たのと同じ分析をしたところ、同じ結果が得られた。
  5. データを更に変えて、narrative vs. non-narrativeではなく、ちゃんとliterary vs. non-literaryを区別しているかどうか調査したところ、支持する結果を得た。ただし、この分析においては、上記2、3点目の特性の中で "and in" だけがliterary vs. non-literary の弁別力を持っていた。

また、上記5点目において、文学作品と考えられている作品はちゃんと文学作品に区分されましたが、時としてポピュラー文学作品もキャノン的な文学作品に区分される場合があることが示されました。ただし、キャノンがポピュラー文学作品に区分されることはなかったとのことです。

以上の結果から、"what constitutes literature" という問いに対して、従来的な「美的」「脱構築」「虚構」「前景化」・・・という答えではなく、「"and in" というdiagram」という答えも可能になったと述べています。

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西川長夫(1997).「国民文学の脱構築」を読む(三浦信孝(編),『多言語主義とは何か』,藤原書店)

西川長夫(1997).「国民文学の脱構築」.In 三浦信孝(編),『多言語主義とは何か』(pp. 246-261).藤原書店.

概要

著者は、「国民」という共同体を国家が作り上げる上で新聞と小説が重要な役割を果たしたことを確認した後、「国民文学」は実は非常に多言語的で、雑種的であることを指摘します。これまで、国民文学と銘打った作品に含まれるこれらの特徴を読み取ることは国民国家のイデオロギーによって妨げられてきました。著者は、「深められた多言語主義は、われわれを国家イデオロギーの呪縛から解き放ち、非国民的な文学の再評価にむかわせると同時に、国民的な文学の隠された豊かさの再発見にむかわせる」(p. 261)とまとめていました。

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2016年4月14日 (木)

片山嘉雄・長瀬慶来・上斗晶代(1996).『英語音声学の基礎-音変化とプロソディーを中心に-』(研究社)

英語音声学の概論書です。

片山嘉雄・長瀬慶来・上斗晶代(1996).『英語音声学の基礎-音変化とプロソディーを中心に-』.研究社.

感想

事例が非常に豊富です。少し古い本にはなりますが、エクササイズも非常に多く、学習した内容を、単文、会話、マザー・グースの中で確認・練習することができます。また、イントネーションに関する記述はとても充実しています。なお、本書は音声学に特化していますので、音素や異音といった話は出てきません。本書には別売りのカセットテープがあるとのことです。

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2016年4月13日 (水)

S.Levine & W.S.Horton(2013).「Using Affective Appraisal to Help Readers Construct Literary Interpretations」を読む(『Scientific Study of Literature』)

英語圏でのL1の研究です。初級文学読者に、読解中に作品内の情意的な表現に注意を払うように指導することで、作品の解釈能力を向上させることができたという結果が報告されています。著者らは、初級レベルの学習者を、文学読者としてレベルを上げていく上で、情意面に着目させることは有効に機能すると述べています。文学作品読解における、情意面への着目の重要性および有用性が実証的に示された論文と言えるでしょう。

Levine, S., & Horton, W. S. (2013). Using affective appraisal to help readers construct literary interpretations. Scientific Study of Literature, 3 (1), 105-136.

概要

調査参加者を実験群と統制群に分け、4週間の指導(統制群には著者がaffective appraisalと呼ぶ指導)を行いました。各群は、調査前後に詩の解釈を行うように指示されています(プレ・テストとポスト・テスト)。テストでは、2つの作品が使用され、調査参加者はプレ・テストでは、どちらか1つの作品を読むように指示され、ポスト・テストでは、プレ・テストで読んだ作品と読まなかった作品の解釈を行いました。

著者らは、調査参加者の解釈を評価するために、6段階のスケールを用意し(p. 118参照)、affective appraisalによる介入前後で実験群はどう変化したのか、統制群と実験群にポスト・テストでどのような違いが現れたのか、を調べました。

なお、著者らが述べるaffective appraisalとは次のような指導です(p. 114)。

  1. Appraise the valence of the text, considering whether the overall impact is positive, negative, or both.
  2. Look for details in the text that led to the affective appraisals.
  3. Explain why each detail seemed negative, positive, or both.

この調査の結果、affective appraisalという指導の有効性が示されました。両群は、プレ・テストでは違いがなかったにも関わらず(両群とも、作品の内容要約が大半でした)、ポスト・テストでは作品の解釈に大きな差が見られました。実験群では、作品が伝えようとしているメッセージを考えることができていました。また、統制群であっても、プレ・テストで読んだ作品の解釈はポスト・テスト時には幾分向上したものの、実験群はポスト・テストで読まなかった作品に対しても作品の解釈に従事することができていました。さらに、統制群の中にもポスト・テストで作品のメッセージを読み解こうとした者がいましたが、その回答は一般論的になる傾向があり、実験群のような具体的な回答にはなっていない傾向が観察されたとのことです。このような結果から、著者らは "affective appraisal as sense-maker" (p. 127) と述べています。

なお、著者らはテスト以外にも、テスト時の解答用紙に調査参加者が残したメモ書きについても分析していますが、ここでも上記の結果をサポートする結果が得られています。

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2016年4月11日 (月)

E.M.Gómez-Jiménez(2015).「'oride lesgo eckshun': Spelling Foregrounding in the Experimental Poetry of E. E. Cummings」を読む(『Language and Literature』)

E. E. Cummingsの詩におけるスペリングの特徴及びその作品内での働きについて整理されています。これまで、E. E. Cummingsのスペリングについてはあまり研究されてきていないといのことです(p. 308)。E. E. Cummingsの言語研究の流れとこの論文の研究方法は本論文を直接ご参照ください。

Gómez-Jiménez, E. M. (2015). 'oride lesgo eckshun': Spelling foregrounding in the experimental poetry of E. E. Cummings. Language and Literature, 24 (4), 307-321.

概要

著者は、スペリング上の特徴として次の4つの技法が確認できたとしています。

  1. letter substitution
  2. letter transposition
  3. letter insertion
  4. letter omission

使用頻度という観点からいくと、上記2はその他のものに比べてE. E. Cummingsの作品ではめったに使われない技法とのことです。

また、これらの技法は作品内で次のような働きをしていました。

  1. representation of linguistic varieties:地域方言、社会方言、中間言語、泥酔状態の表現
  2. plays on words:洒落(puns)、アナグラム、スプーナリズム
  3. その他:普通よりも長い時間をかけて文章を読む(リニア読解処理ではなく非リニア読解処理を行う)ように読者に指示するといった読解処理のコントロール、会話におけるinterruptionを表現、イコン性の表現

また、今回の調査の結果、letter subsitutionはrepresentation of linguistic varietiesによく使用される傾向があり、letter transpositionはplay on wordsや読解処理のコントロールに使用される傾向が見られたとのことです。

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2016年4月 4日 (月)

山中桂一(1994).「構造-ドラゴン・クエストから言語の本質へ」を読む(小林康夫・船曳建夫(編),『知の技法』,東京大学出版会)

山中桂一(1994).「構造-ドラゴン・クエストから言語の本質へ」.In 小林康夫・船曳建夫(編),『知の技法』(pp. 102-114).東京大学出版会.

概要

V.プロップの研究などを中心にしながら、構造とはどのような考え方であり、テクストの構造を分析するとはどのようなことを意味するのかが分かりやすく説明されています。ただし、残念ながら、論文の中にドラクエの話は出てきません。ここでは、あくまでも「竜退治」という民話を指しています。

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2016年4月 1日 (金)

D.N.Rapp,H.Komeda,&S.R.Hinze(2011).「Vivifications of Literary Investigation」を読む(『Scientific Study of Literature』)

2011年当時、これから取り組まれる課題としてどのようなものがあるか、そのためにどのような研究方法が考えられるか、という事柄が提示されています。すでに2016年現在で取り組まれている事柄もあり、文学の経験的研究の進展の速さを感じます。

Rapp, D. N., Komeda, H., & Hinze, S. R. (2011). Vivifications of literary investigation. Scientific Study of Literature, 1 (1), 123-135.

概要

著者らは、次の3点を取り組むべき課題として提示しています。

  1. 作者が意図した事柄が読者に実際にどのように受け取られているのか明らかにすること(作者の意図と実際の受容の関連性)
  2. 読者は作品中で経験する感情にどのように反応しているのか
  3. 読者は作品やその作品に関する他人の言葉からどのようなことを学ぶのか(作品やその作品に関する他人の言葉から、読者は自身の理解や知識をどのように変容させ、彼らの作品の理解もどのように変化するのか)

上記3点目に関して、文学テスト実施の影響を考えることの重要性も挙げられていました。著者らは、一見あまり重要とは思えないような情報(推理小説などで当初は取るに足らないと思えた情報が後に重要だと判明する場合などを思い出されたい)や読者が苦手としている事柄(推測など)をテストで問うことは、彼らの作品理解や文学作品読解能力にどのような影響を与えるのか(プラスに働くのかどうかなど)調査する必要があると述べています。このことは、教育に対する、文学の経験的研究教育の重要な貢献の1つになると考えられています。

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窪薗晴夫・溝越彰(1991).『英語の発音と英詩の韻律』を読む(英潮社)

再読になります。音声学・音韻論の入門書としては難しい方になると思いますので、この本を読む前に音声学や音韻論の概論書を数冊読んでおいた方がいいかもしれません。文体論をはじめとして文学の言語に関心のある人にお勧めです。

窪薗晴夫・溝越彰(1991).『英語の発音と英詩の韻律』.英潮社.

感想

生成音韻論などの知見も活用しながら、従来の音声学・音韻論の解説だけにとどまらず、頭韻や脚韻などの文化的な言語現象、さらに英詩の韻律について詳しく説明されています(生成韻律論も紹介されています)。事例が非常に豊富で多岐に渡っていますので、とても面白く読めます。英詩などを言語分析すると、どうしても逸脱的な側面ばかりに目が行ってしまいますが、その構造がしっかりと英語の構造に基づいている(当たり前のことではあるのですが、文体論などをやっているとついつい忘れがちです)ことを思い出させてくれます。

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田中茂範(2015).『わかるから使えるへ 表現英文法』(増補改訂版)を読む(コスモピア)

主に認知言語学の観点から英文法が整理されています。

田中茂範(2015).『わかるから使えるへ 表現英文法』(増補改訂版).コスモピア.

感想

一般的に学校文法で習う文法現象が認知言語学の観点からまとめ直されています。個人的には数冊の伝統的な文法書を読んだ後に読むと一番効果的なのではないかと思います。特定の文法項目に関わる口語表現の例文も多く引用されていますし、類似表現のニュアンスの違いなども丹念にわかりやすく記述されています。すでに獲得した英文法に関わる知識を再構築してくれます。特に英語教育に携わる人には有益な一冊と言えるでしょう。

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窪薗晴夫(1998).『音声学・音韻論』を読む(くろしお出版)

音声学と音韻論の概論書です。

窪薗晴夫(1998).『音声学・音韻論』.くろしお出版.

感想

日英語が対照して説明してあり、両言語の共通性と違いが豊富な事例と共に説明されています。日本語文法などに明るくないとやや難しく思うかもしれません(私も実際にやや難しいという感想を持ちました)が、様々な音声現象について知ることができる有益な一冊だと思います。私は特に、派生語のアクセントと複合語のアクセントについての詳しい記述がとても面白く思いました。

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宗宮喜代子(2014).「英文法における数と進行相の関連について」を読む(岐阜聖徳学園大学外国語学部(編),『ことばのプリズム:文学・言語・教育』,彩流社)

名詞と動詞を並行的に考えるLangackerの考えを伝統文法の中で捉え直しながら、なぜ現代英語は数と進行相を持つに至ったのか考察されています。

宗宮喜代子(2014).「英文法における数と進行相の関連について」.岐阜聖徳学園大学外国語学部(編),『ことばのプリズム:文学・言語・教育』(pp. 167-201).彩流社.

概要

著者は詳細な検討をもとに次の結論を導き出しています。

「英語は、空間の個体を理解するのと同じ方法で時間的な存在を理解しようとする。普通名詞の単数形が指示する空間的な個体は、非均質性と有界性によって特徴づけられる。これらの特徴は、普通名詞以外の名詞を理解するのに有用であると同時に、時間の中で展開する「達成」という状況を理解することを可能にする。」(pp. 197-198)

「達成の状況を表す達成動詞は進行相のプロトタイプを示し、その他の動詞類の進行相は達成動詞に準じて理解される。達成動詞には特定数を表す目的語などの名詞句が不可欠であることから、名詞における数の文法範疇と動詞が表す進行相は緊密に関連していることがわかる。」(p. 198)

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