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2013年5月29日 (水)

R.Carter(2001).「Vocabulary」を読む(R.Carter&D.Nunan(編),The Cambridge Guide to Teaching English to Speakers of Other Languages,CUP)

語彙習得論と辞書編集研究(コーパス使用)を中心として語彙に関して整理がなされています。

Carter, R. (2001). Vocabulary. In R. Carter & D. Nunan (Eds.), The Cambridge guide to teaching English to speakers of other languages (pp. 42-47). Cambridge: Cambridge University Press.

感想:著者は研究の背景として、語彙習得研究に関しては処理深度仮説を、辞書編集研究に関してはコーパス活用の現状が説明されていました。辞書編集研究に関して、コーパスを利用しつつも学習者の助けになるかどうかを一番の中心として編纂するというLDOCEのアプローチには非常に関心しました。

研究に関しては、まず語彙習得研究について、N. Ellisが提唱するstrong implicit-learning hypothesis(代表的な学者としてKrashen)、weak implicit-learning hypothesis(代表的な学者としてSchmidt)、weak explicit-learning hypothesis(代表的な学者としてSternbergとHulstijn)、strong explicit-learning hypothesis(代表的な学者としてCraik & Lockhart)が紹介されていました。著者は特に4番目の仮説に関してこの論文が執筆された当時最も盛んに研究されていたと述べています。また、メタ認知的方略の重要性を指摘しつつも、語彙知識のタイプによって学習方法が異なること、学習者のレベルによって適した学習方法が異なること、語彙のタイプによって明示的学習法と暗示的学習法のどちらが適切かは異なること、などが指摘されていました。

また、言語の記述に関して、語彙的な側面の重要性が徐々に認識されてきている(これまでは文法中心だったのですが)ということが指摘されていました。

実践に関してはlexical approachが紹介されていました。

個人的には少し物足りない感じがしたのですが、ページの制約もあって仕方がなかったのでしょう。

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2013年5月22日 (水)

D.Larsen-Freeman(2001).「Grammar」を読む(R.Carter&D.Nunan(編),The Cambridge Guide to Teaching English to Speakers of Other Languages,CUP)

文法指導およぼその背景にある文法理論について整理されています。

Larsen-Freeman, D. (2001). Grammar. In R. Carter & D. Nunan (Eds.), The Cambridge guide to teaching English to speakers of other languages (pp. 34-41). Cambridge: Cambridge University Press.

感想:著者はまず、「文法」という語には2つの用法があると述べます。それは、"It is used to refer both to language users' subconscious internal system and to linguists' attempts excplicitly to codify - or describe - that system." (p. 34) と述べられています。

次に研究の背景について整理がされます。著者はまず形式文法について整理します。ここでは、アメリカ構造主義言語学(相補分布、行動主義心理学)と生成文法(変形、深層構造、能力と運用、普遍文法、原理、インプットの困窮)が触れられていました。次に機能文法について、この文法理論の基本的な考え方と選択体系機能文法に言及がありました。また、言語教育における文法指導に関して、これら2つの文法理論の影響を受けてきたこと、communicative approachでの文法指導の考え方およびタスク(ロール・プレイ、ジグソー・タスク、インフォメーション・ギャップ)、が説明されていました。また、文法指導が徐々にcommunicationを意識したものへと移行したのはHatchらによるSLA研究の "One learns how to do conversation, one learns how to interact verbally and, out of this interaction, syntactic structures are developed." (p. 36) という考えにも影響を受けているそうです。ただし、言語形式を犠牲にして単に新しいアプローチを行っているにすぎないのではないかという批判もあるそうです。

次は研究成果についての整理です。ここでは、focus on formではlearnability hypothesisとpriming subsequent noticingという考えを混ぜて解説がされていました。UGに基づいたSLA研究では、パラメータの再設定と否定的及び肯定的証拠の関係について触れられています。さらに、社会文化的理論、談話文法、コーパス言語学(conventionalized lexicogrammatical unitsと流暢さの関係)、コネクショニズムが触れられていました。

実践に関しては、PPP、スパイラル・シラバス、言葉への気づき、input-processing、(grammatical) consciousness raising、grammaringという考えが紹介されていました。PPPに関しては、learnabilityの問題が、スパイラル・シラバスに関しては Rutherfordの "an optimal approach to dealing with the non-linearity of grammatical acquisition is when teachers help students understand the general principles of grammar (e.g. how to modify basic word order) rather than concentrating on teaching structure-specific rules." (p. 39) という考えに言及がされていました。さらに、Larsen-Freeman (1997, 1992) は文法は形式、意味、使用の3つの側面が結びついていることを指摘し、"While productive practice may be useful for working on form, associative learning may account more for meaning, and awareness of and sensitivity to context may be required for appropriate use. Since grammar is complex, and students' learning styles vary, learning grammar is not likely to be accomplished through a single means." (p. 40) と述べていました。また、フィードバックの与え方に関してこれまでの研究が整理されており、"deliberately encourage learners to make overgeneralization errors which are then corrected" (provide explicit linguistic rules when errors are made" "provide negative feedback by recasting or leading students to self-repair by elicitation, clarification, metalinguistic clues or repetition" というものが紹介されていました(いずれもp. 40)。

最後に展望ですが、著者はコーパス言語学、モード別の文法、コネクショニズムに期待を寄せています。さらに、教師の文法観(およびその実践への影響)の研究と教師のメタ言語使用の研究(およびその効果)も発展が望まれるテーマとして言及されていました。

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2013年5月15日 (水)

J.Reid(2001).「Writing」を読む(R.Carter&D.Nunan(編),The Cambridge Guide to Teaching English to Speakers of Other Languages,CUP)

ライティング研究について整理されています。

Reid, J. (2001). Writing. In R. Carter & D. Nunan (Eds.), The Cambridge guide to teaching English to speakers of other languages (pp. 28-33). Cambridge: Cambridge University Press.

感想:ライティングは、かつては学習対象とはみなされておらず、学習の手段または学習を補助するものという程度にしか認識されていなかったようです。また、L2ライティング研究が進むにつれて、L1ライティング研究との接点も出てきたそうです。

ライティングも基本的にはオーディオリンガル・メソッドの考えに従っていたそうですが、徐々にL1ライティング研究との接点が出てくると、strictly controlled practiceからguided practiceへと移行した行くことになります(ただし、その内容は言語構造に特化したものであったそうです)。しかし、次第にcomposition techniquesやstrategiesに着目したアプローチへと変化していきます。その理由は、L1でもそのような研究が始まったこと、及びアカデミック・ライティングの分野で、特に進学との関係でこれらの要素を学習する必要性が認識されたことによるそうです。その中で、errorの認識も変化し(逸脱的なものという考えから産出的・発達的なものとみなされるようになります)、文法よりもコミュニケーションという側面が重視されるようになりました。

1980年代には、L1で自己発見プロセスとの関係でexpressive approachが流行し、L2に はprocess重視のアプローチとproduct重視のアプローチという(誤った)対立が生じます。ただし、実際には "most L2 students were being taught process writing strategies to achieve effective written communication (products), with differences occurring in emphasis" (p. 29)とのことでした。また、21世紀に入ると、学習者中心のアプローチ、アカデミック・ライティングをcommucative social actと見なす考え、作者―読者間の相互作用を意識したアプローチ、問題解決アプローチ、ライティングをdiscourse convenstionの実践と見なす考え、が入ってくることになりました。また、1990年代には、ライティング・テストの導入、TESOLのプログラムの中にライティングのコースが多く作られたこと、ライティング能力を徐々に高めていくことができるように編纂されたテキストの発行、が行われました。

更に、著者はcreative writingについても触れています。creative writingには、"re-writing from different viewpoints; / shifting registers to explore changing communicative effects; / writing predictions and completions to texts as part of a process of detailed text study; and / cross-genre writing (e.g. from poetry to prose and vice versa)" (pp. 29-30) といった活動が多く用いられるそうです。これらの活動を他の言語能力のための活動と統合し、encourage learners to write their way into more precise, interpretative readings while at the same time fostering greater attention to forms of writing to reflection on what is involved in the creation of a text and to adapting writing style to the audience and context of writing." (p. 30) といった事柄が期待されているそうです。こういったライティングへの文学的アプローチは西洋の中等教育に端を発しているそうですが、最近では東南アジアでも取り入れられて始めているとのことでした。

次に、研究について整理されています。伝統的には、L1とL2のライティングを比較し、その類似点と欠落点を見つけていくという手法がとられましたが、最近では差異を「欠落」ではなく「違い」とみなす考え方が浸透してきているそうです。また、対照修辞学、学習者に着目した研究、誤りに関するアプローチの変化、ライティング・テスト研究、ジャンル研究(ライティングを社会共同体の談話的慣習の社会的実践と見なし、各ジャンルでの談話について調べそれを教育へと応用)、も取り上げられていました。

今や、ライティングは学習すべき対象として認識されるようになり、教員養成においても重要視されるようになりました。これまでの教育実践等から、"careful needs analysis to plan curriculum; / co-operative and group work (including collaborative writing) that strengthen the community of the class and offer writers authentic audiences; / integration of language skills in class activities; learning style and strategy training to help students learn how to learn (Reid 1998); and / the use of relevant, authentic materials and tasks." (p. 32) が有効であるということが示されてきているそうです。また、一つの指導法や指導技術がすべての学習者集団に当てはまるわけではないことも認識され、折衷的教授法が実践されているそうでした。さらに、インターネットの発達によって、ライティングおよびその学習はかなり姿が変わってきたという点も指摘されていました。

今後は、ライティングの指導法をアクション・リサーチによって精錬していくこと、学術的に成功するために必須のライティング・スキルの抽出、特定のジャンルで必要となる文法的クラスターの発見、教員養成段階でライティング指導に関して知っていくべき事柄のニーズ・アナリシス、などが指摘されていました。他にも、学習プロセス、ライティング能力発達の測定、カリキュラムの作成法に関して研究する必要があること、L1研究と連携していく必要があること、が指摘されていました。

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2013年5月 8日 (水)

C.Wallace(2001).「Reading」を読む(R.Carter&D.Nunan(編),The Cambridge Guide to Teaching English to Speakers of Other Languages,CUP)

リーディングについてまとめられた論文です。

Wallace, C. (2001). Reading. In R. Carter & D. Nunan (Eds.), The Cambridge guide to teaching English to speakers of other languages (pp. 21-27). Cambridge: Cambridge University Press.

感想:概略という形ではありますが、リーディングが非常に包括的に提示されていました。著者は、リーディングにはpractice、product、processという3つの捉え方があるとし、それぞれの捉え方に関して背景、研究成果、実践が紹介されていました。

まず、practiceという捉え方に関して、リテラシーが説明されていました。Street (1984) による2つのliteracyの捉え方(autonomous model of literacyとideological view of literacy)がとても興味深かったです。研究成果としては、multi-literaciesの重要性を示す研究が紹介されていました。実践としては、学習者自身が自身のリテラシーについて意識掲揚する活動が紹介されていました。

次にproductという捉え方に関しては、フォニックス、look-and-say(whole-word)、ボトムアップ・アプローチ、ジャンル・アプローチが紹介されていました。研究成果としては、スキルの学習順序に関する階層性を調べた研究(まだ、そのような階層性はまだ整理しきれてないようです)、音と文字の対応関係、cohesion、文法、ジャンルなどの特性の処理に関する研究が紹介されていました。特に、ジャンル・アプローチの研究者が主張している「テクストはどのように働くのかということに関する知識」を学習者に示すという考えには大変興味を持ちました。また、実践としては、初期の学習においてはボトム・アップ処理を重視するという立場とメタ言語知識の養成が(特に音素と形態素レベルでの分析はイングランドとウェールズで実践されているthe National Literacy Strategyに取り入れられているそうです)、中級レベル以上の学習においてはより複雑な文の構造、ジャンル特有の特性、テクスト構造に関する指導が紹介されていました。

Processという捉え方に関しては、トップダウン・アプローチが紹介され、1980年代~90年代にかけて、読者が受身的な存在から能動的で相互作用的な存在と認識されるようになったと説明されていました。また、最近では批判的な読解に関しても注目が集まっています。研究成果としては、トップダウン処理によって読者は部分的かつ選択的にテクストを読解しているという考えが紹介されていました(ただし、その後の実験で読者はテクスト内のすべての語を見ているという結果もあり、この点はまだ決着がついていません)。また、Goodman & Smithは、読者はgraphophonic、syntactic、semanticという3つの主要システムを使って読解をしているという考えを示し、その中で読者によるmiscueに着目して読者の読解プロセスを明らかにしようとしたそうです。さらに、記載は少なかったですが、successful readerの研究とcritical readingの研究への言及もありました。実践としては、初期の学習に関してはmiscue analysis(学習者の中間言語の状態を知ることが目的のようです)とlanguage experience approach(自作のテクストやGraded Readerを使って読解処理の流暢さを鍛えるアプローチ)が、中級レベル以上の学習に関しては、既知の世界に関する知識や言語知識、読解方略に関する能力や意欲を活用した実践(pre-reading活動やwhile-reading活動に利用)とテクストを多様な方法で読ませる実践、自身の読解や読解方略について省察させる実践、が紹介されていました。また、批判的読解のための実践も紹介されています。

また、これら以外にショートサーキット仮説に関しても簡単に説明されていました。今後の課題としては、本章で提示されたリーディングの3つの考え方をいかに統合していくのかということの検討が挙げられていました。個人的には3つ目のprocessとしてのアプローチに一番なじみがあるのですが、それ以外の2つの考え方の重要性に関してとても考えさせられました。

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2013年5月 1日 (水)

有村兼彬・天野政千代(1987).『英語の文法』を読む(英潮社)

大学の英文科の学生向けの英文法の解説本です。英語学(生成文法や発話行為論など)を下地にはしていますが、それが前面には出ておらず、あくまでも英文法の本として読むことができます。文献情報は以下の通りです。

有村兼彬・天野政千代(1987).『英語の文法』.英潮社.

感想:これまでに読んだ英文法関係の単行本の中で最も難解でした。しかし、非常に豊富な事例と、詳しい解説が書かれており、毎日少しずつ読んでいき、読破することができました。記されている文法現象には、他の文献ではあまり掲載されていない事柄も多く、とても勉強になりました。各章末に練習問題も設けてありますので、自分の理解を確認することもできます。英文法好きの方にはお勧めの一冊です。最後に章立てを示しておきます。

第1章:助動詞

第2章:動詞句

第3章:修飾

第4章:準動詞

第5章:限定詞と数量詞

第6章:代名詞・代用詞・省略

第7章:文の種類

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