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2012年12月11日 (火)

行場次朗(2010).「感性の基本次元と脳内基盤」を読む(三浦佳世(編),『感覚と感性』,北大路書房)

Osgoodらによって考案されたsemantic differential method(SD法)で抽出された評価性因子、活動性因子、力量性因子の神経基盤についての調査がまとめられています。なお、評価性因子は「良い―悪い」などの主観的評価や好みに関わる因子、活動性因子は「動的な―静的な」など文字通り活動に関わる因子、力量性因子は対象や概念の強さや大きさに関わる因子だそうです(p. 57)

行場次朗(2010).「感性の基本次元と脳内基盤」.In三浦佳世(編),『感覚と感性』(pp. 56-68).北大路書房.

感想:SD法は対象の情緒的な内包を双極性の形容詞対尺度によって測定する有名な方法ですが、その尺度を使用した研究について様々な情報が集約されています。また、modality diufferential method(MD法)を用いた共感覚に関連した研究も紹介されていました。

私がこの論文で特に自分の研究との関係で関心を持ったのは、俳句を刺激として、その俳句刺激に対して形容対で評定を行っている際の脳の活動を調べた結果報告です。その結果によると、「評価性」では下前頭回、中側頭回、中前頭回が、活動性では中前頭回、線状体、中前頭回が、力量性では中前頭回、線条体、下前頭回の活性化が見られた」(p. 66)そうです。この調査結果は線画を刺激として行った同様な調査(この記事では省略します)でもほぼ同じような結果になったそうで(多少の違いはありますが)、「線画と俳句という素材が異なっても、評価性、活動性、力量性に関わる評定で、因子に特徴的な脳活動が存在することを示唆するものである」(p. 66)と述べられていました。なお、評価性、活動性、力量性で共通して活性化が確認された線条体は、「魅力などの評価や評定について重要な役割を果たしているとの研究もある」(p. 66)そうで、特に腹側線条体は「報酬、快感、嗜癖、恐れなどに関係する部位として知られているので、印象評価全体に重要であると考えることもできるだろう。」(pp. 66-67)と指摘されていました。

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2012年12月 7日 (金)

佐々祐子(2009).「言語・非言語コミュニケーションに関与する神経基盤」を読む(東北大学言語認知総合科学COE論文集刊行委員会(編),『言語・脳・認知の科学と外国語習得』,ひつじ書房)

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションが同じ神経基盤を用いている点と、他者とのコミュニケーションの神経基盤は「心の理論」の神経基盤と強く関係しているという点が指摘されたとても面白い論文でした。

佐々祐子(2009).「言語・非言語コミュニケーションに関与する神経基盤」.In東北大学言語認知総合科学COE論文集刊行委員会(編),『言語・脳・認知の科学と外国語習得』(pp. 125-135).ひつじ書房.

感想:著者は言語コミュニケーションに関する神経基盤として、テキストの理解の神経活動を調べた先行研究を整理しています。それによりますと、「左大脳半球の下前頭回及び上側頭回後部といったいわゆる言語中枢領域だけではなく、右大脳半球の側頭葉領域にも活動が報告されている」(p. 126)そうです。また、登場人物の心情など背景的情報を理解しながらテキストを理解する場合には、「両側大脳半球の側頭葉前部(側頭極も含む)と左大脳半球の上側頭回後部に加え、内側前頭前野、後部帯状回にも強い賦活が見られたと報告されており、内側前頭前野、後部帯状回が、他者の心的状態などテキストの背景的情報を理解する処理に関わっていることが示唆される」(p. 127)と述べられていました。さらに、内側前頭前野は、特に状況判断をしているときに強く活動し、右大脳半球の側頭極は、皮肉表現に接するときに統計的に優位な活動が見られたという結果も紹介されていました。

著者は上記の研究成果に、コミュニケーション障害を持つ人たちの研究結果を加えながら、「左大脳半球の言語中枢領域を中心とする領域と、右大脳半球の側頭葉領域の広範なネットワークがテキストの処理に重要な役割を担っていると考えられる。特に、両側大脳半球の側頭葉前部の領域、内側前頭前野、後部帯状回、左大脳半球の上側頭回周辺の後部領域は、テキストから読み取れる背景的情報の理解に貢献している可能性が示唆された。これらの領域は、行動から他者の心的状態を推測する能力とされる「心の理論」のが関与する領域でもある。また、テキスト理解に関するこのような広範な領域の関与に関して、Kupergerg et al. (2006) は、主体的に推論を働かせながらどのような文脈かを推測するために、自らの長期意味記憶から情報を想起したりそれらを統合したりするための説明している。」(pp. 127-128)とまとめていました。

次に、著者は非言語コミュニケーションにおける神経基盤を調査した研究(顔の表情や音声による感情の認知に関する研究)を紹介しています。詳細は割愛しますが、著者は「コミュニケーションの立場から考えると、左大脳半球の言語中枢領域は言語を用いたコミュニケーションに関与しているのに対して、右大脳半球に存在する言語中枢領域相同部は、視覚や聴覚といった情報のモダリティーによらない情動判断に関与していることが示唆され、コミュニケーションに特化した、非言語的情報を処理する機能を持つ可能性が示唆される」(p. 130)とまとめていました。

最後に「心の理論」に関与する神経基盤についての先行研究の結果が整理されていました。「他者に話しかけている時に左ない脳半球の内側前頭前野、上側頭溝前部、側頭―頭頂接合部に強い賦活が認められた・・・。これらの領域は、行動から他者の心的状態を推測する能力「心の理論」に関与する領域と言われていることから、、他者へ話しかけるというコミュニケーションの動機付けのプロセスに、「心の理論」に関与するネットワークが重要な役割を果たしていると考えられる。」(pp. 131-132)と著者は述べています。さらに、他の先行研究の結果から、「前部帯状回を含む内側前頭前野、両側大脳半球の側頭葉前部(側頭極)は、他者との関わりを知覚し、社会的相互作用を伴う行動の理解と関係した機能を持つことが示唆される。特に、内側前頭前野は社会的相互作用のある場面の中で、対人関係を築こうとしている意図の認知期と関係があることが指摘されている。」(p. 132)とも述べられています。

私の科研の研究にもとても大きな示唆を与えてくれた論文でした。とても勉強になりました。

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