« G.Hall(2005).『Literature in Language Education』第5章を読む(Palgrave Macmillan) | トップページ | G.Hall(2005).『Literature in Language Education』第7章を読む(Palgrave Macmillan) »

2009年2月26日 (木)

G.Hall(2005).『Literature in Language Education』第6章を読む(Palgrave Macmillan)

タイトル:Readers reading literature

感想:この章では、著者は文学読者の研究を紹介していました。エキスパートの読者を扱ったKintgen (1983)、普通の読者を扱ったde Beaugrande (1985)、第2言語読者を扱ったHanauer (2001)が紹介してありました。著者は最初の2つの研究を比較する中で、(1)普通の読者は語彙のレベルでしか言語に言及しない(形式、韻、音韻システム、統語には言及しない)、(2)普通の読者は詩を日常語に翻訳することで満足してしまう傾向が見られる(形式に注目し、その意味について考えることはあまりしない)、(3)普通の読者は詩の読解でぶつかる困難点を注意を払うべきものと捉えてはいるものの、詩読経験の文学的な側面を過小評価する傾向があり、不安や不確かさを表明する、という点を指摘していました。また、Hanauerの研究に言及する中で、(1)気づきの対象になるのは文学的な特徴や書記素論的形式ではなくて語彙である、(2)全体的な解釈は局所的な解釈を統合することによってなされる、(3)collecting data(テキストから解釈に使う材料を集める)、proposing interpretative hypotheses、developing these interpretative hypothesesという3つの操作が(ペアによる)読解の大半を示す、(4)少なくとも敷居レベル以上の第二言語学習者は第一言語読者とほぼ同じ行動様式を示す、といった点が指摘されていました。

次はHunt and Vipondの研究が紹介されていました。彼らは、PolanyiやLabovのoral narrativeの研究を参考にして、文学読解に必要なのはpoint-driven readingであるとしました。具体的にはcoherence(一貫性を求めるためには、時として判断や評価を遅らせることも必要です)、narratve surface markers(表層情報は重要です)、transaction(語り手を意識したりすることも必要です)を探求する読みであると述べています。もちろん、聴解と読解は違います。それに、私たちは普通はcompetent listeners of storiesです。それに比べて、文学の読解は難しいですし、文脈もありません。創造力も必要です。しかし、彼らはoral narrativeの研究は文学読解の研究の有用なキーとなると考えています。Hunt and Vipondの研究と道を同じくするものとして、文学コミュニケーションを語り手と読者の会話と捉えるBortolussi and Dixonも紹介してありました。

次は第二言語に特化した研究として、Goh (1991)が紹介してありました。この研究のまとめとして、"What this discussion should indicate is the relevance of Hunt and Vipond's work to second language story readers..., but also that linguistic matters are not easily distinguished from wider cultural and cognitive issues in investigating literary incomprehension." (p. 174)と述べられていました。

最後は文学読解における情意面についての研究について言及してありました。Mattixらによる、文学の読解を"task"や"work"といった「仕事」の観点から議論するのには問題があるという主張が紹介されていました。この分野も研究不足であり、これから研究が重ねられていく必要があると著者は述べています。この節では、(1)前景化された言語表現は読者に感情を引き起こす(Miall)、(2)第一言語の読者は文学テクストに感情を伴って反応しようとするが、第二言語学習者はこういった文学読解の重要な要素を落としてしまっているおそれがある(Miall)、(3)ArnoldやByramらの研究(異文化間コミュニケーションについての研究)との連携が望まれる、といった点が指摘されていました。

|

« G.Hall(2005).『Literature in Language Education』第5章を読む(Palgrave Macmillan) | トップページ | G.Hall(2005).『Literature in Language Education』第7章を読む(Palgrave Macmillan) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« G.Hall(2005).『Literature in Language Education』第5章を読む(Palgrave Macmillan) | トップページ | G.Hall(2005).『Literature in Language Education』第7章を読む(Palgrave Macmillan) »